2017/04/22

非匿名な関係は協力を促す

「名前を知っていると互いに協力を促すことを発見 北海道大学など」
(大学ジャーナル オンライン編)http://univ-journal.jp/13292/

 北海道大学電子科学研究所のマルコ・ユスップ助教らの研究グループは、ペアを組んだ実験参加者が互いの名前を知っている非匿名(顕名)状態の方が匿名状態よりも相互協力を促すことを発見した。

 文明的日常生活には相互協力が不可欠である。ダーウィンの自然選択説(生物の進化を説明する理論)に従えば、利己的行動が有利に働くことが多く、人間(および動物)が進化過程でどのように協力的行動を獲得してきたのかは、未だ十分に解明されていない。

 そこで研究グループは、実験参加者が自己利益(利己主義)と共通利益(利他主義)のどちらを選択するのかを調べる「社会的ジレンマ実験」を通じて、人間社会における協力行動の進化メカニズムの理解促進を目指した。

 実験は、中国の雲南財経大学で154名の学生を対象に行われ、匿名、顕名の2条件が設定された。実験参加者は相手に対し、協力、裏切り、罰のいずれかを選択し、両者の選択に応じた報酬が与えられた。

 この選択を繰り返し行った結果、顕名条件では、匿名条件よりも協力頻度が大幅に増加し、罰で始まった場合でも協力的選択へと関係が修復される確率が高かった。匿名条件では関係が悪化していく傾向が強いのに対し、顕名条件では良好関係が確立あるいは維持される確率が高かった。

 本研究の興味深い知見の一つは、顕名条件でも、相手のことを知らない振りをして裏切り続けることが有利であるにも関わらず、実際には協力行動が促進され、結果として成功(報酬の増加)が促進される点である。この結果は、合理性は人間の判断基準の一部に過ぎないことを改めて強調する。

 今回の実験結果は、社会的ジレンマに直面した時の意思決定が、合理性だけでなく、さまざまな認知バイアス(判断における合理性からの系統的逸脱)に影響されることを示唆する。

 今後、認知バイアスと意思決定の関係を明らかにすることで、合理的思考に基づく意思決定を促すことができると期待される。将来的に、環境保全交渉といった国際的意思決定の場で、目標とする合意に到達するために役立つことも期待される。

原論文 Onymity promotes cooperation in social dilemma experiments

匿名のままでは死ねない

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