2017/06/06

発想としての「3」

ある座談会で、外語大の沼野恭子さんがこう言っている。
 相対化について言いますと、日本語と英語だけではなく、もう1つ別の言語を学ぶということがとても大事だと思います。3つの言語を知ることによって三角形が形成され、ものの考え方がより相対化されます。
 二点では直線にしかなりませんが、3つの点があって三角形になることで空間化する。さらに多ければ円に近づき、ますます相対化することになる。これが人間の幅につながるのだと思います。
 最近の日本の風潮としては、第二外国語をとらなくていいという学校が増えています。これはとても残念なことで、言語の初歩をかじるだけでも、「こんなに考え方が違うんだ」という発見のある場合があります。
ことば以外でも、3の意義はあてはまる。社会は3人から。だし、二分類がうまくいかない場合、いきなり4になると、4象限を構成する2軸を考えなければならない。しかし、うまく行く保証はない。4点は結び方によってねじれるが、3点だとねじれない、とか。「はい」と「いいえ」の中間も絶妙だし。

国際比較も3カ国になると、ひろがる。ボクがよく引用するのは米韓日の浮気調査(Buss, et al., 1999の研究)。回答者は大学生。身体的浮気と心理的浮気のどちらを嫉妬するか。

Buss, D. M., Shackelford, T. K., Kirkpatrick, L.A., Choe, J., Lira, H. K., Hasegawa, M., Hasegawa, T., & Bennett, K. (1999). Jealousy and the nature of beliefs about infidelity: Tests of competing hypotheses about sex differences in the United States, Korea, and Japan. Personal Relationships, 6, 125-150. 結果を要約した表はここにある。神野雄 2015「嫉妬研究の概観と展望」のTable 1。

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...