2017/06/08

オープンエンド会話のすすめ

 ニュース画面でクロール(画面に流れる文字情報)が始まったのは1981年。イラクの米国大使館人質事件が起きたときだ。最新情報を知りたがった視聴者にこたえて。「人質事件は終息したが、私たちの注意力を分割するスクロールは残った」。

シェリー・タークルの『一緒にいてもスマホ SNSとFTF』(日暮雅道訳)から。

 本書の主張は「会話の復権」。ただのおしゃべりではなく、オープンエンディッドな会話。つまり、イエス・ノーで答えられないような会話だ。デジタル依存へのレジリエンスがあるうちに、ネットなし時代を経験している人がいるうちに、生まれついてからネットあり・デジタルあり世代だけになる前に、という意味でもある。
 手書きで原稿を書いてきた経験があると、ワープロのありがたみはわかるが、ワープロで書いてきている人はどうなのだろう。

さて、この本で知った用語がいくつかある。
  • ファビング phubbing スマートフォンをはじめとするモバイル端末に熱中するあまり、現実社会で居合わせている人へ意識を向けず、コミュニケーションが阻害されてしまっている状況を指す語である(「IT用語辞典バイナリ」から)。
  • グレイジング grazing あちこちで、いろいろなことを拾い上げ、そうした断片をかき集めこと。まとめサイト作成もこの一種だろう。


 なぜふれたのかわからないが、訳者あとがきの最後に、「シーモア・パパートは、タークルの元配偶者」と出てくる。知らなかった。

つながっていても孤独?」(TED)は、彼女のシリーズ3作めAlone togetherの内容。

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...