バニアード(1999)の『心理学への異議』(鈴木聡志訳 2005)はいい本だ。内容も訳も。
その本の原注に、以下のような記述があったのをすっかり忘れていた。
心理学研究で調査される人を表現するのに「被験者(subject)」と「参加者(participant)」のどちらを使うかについては議論がある。私の意見では、その人を参加者と表現するのが適切なのは、行われていることについて何か言い、そしてデータの所有権を有する場合である。実験室に連れて来られて何かされ、そして測定される場合には、その人を表現するのにもっとも適切なことばはおそらく「被験者」である。
わたしも同意する。
『新版 インターネットの心理学』ではsubjectを「実験参加者」としてしまった。直す機会があればsubjectは被験者に変えたい(そのためにも売れてほしい)。
日本の心理学研究論文ではおそらく一律に「(実験)参加者」と表現することが推奨されている。
日本心理学会(2009)の「倫理規定」に、こんなくだりがある。
「研究対象者」とは,それぞれの研究が対象とする者を指す。かつては「被験者」という呼び方が一般的であったが,英語圏では,「被験者」という言葉に対応する“subjects”が,主従関係を暗示するという理由で,現在は“participants”などと呼ぶことが多い。日本語の「被験者」にはそのような含みはなく,中立的な意味で使用されていると思われるが,本規程では,より客観的な印象を与える「研究対象者」という用語を用いることにした。ただし,それぞれの分野で一般的な呼び方が存在する場合はそれにしたがった。すなわち,実験研究では「実験参加者」とし,フィールド研究では「研究協力者」とした。
バニアードの最近の論文にこんなものがある。
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