2017/07/21

Gebauer et al.2012:ファーストネームと人生

残念なファーストネーム:
名前による関係価値低下と対人無視の効果

Jochen E. Gebauer, Mark R. Leary, Wiebke Neberich
2012
Unfortunate First Names:
Effects of Name-Based Relational Devaluation and Interpersonal Neglect
Social Psychological and Personality Science
Volume: 3 issue: 5, 590-596

要旨
ファーストネームがネガティブなせいで相手から無視されることはあるのだろうか。研究1(968人)では、非常にネガティブなファーストネームのオンラインデーター(オンラインでデート相手を求める人)と非常にポジティブなファーストネームを持つオンラインデーターとが比較された。研究2(4,070人)では、稀有な名前の人たちの集団のオンラインデーターについて、やや魅力的でないファーストネームのオンラインデーター対やや魅力なファーストネームのオンラインデーターで比較がなされた。研究3(6,775人)は、人気の高低で比較がなされた。その際、出生時の人気度を統制した。以上の研究をつうじて、ネガティブなファーストネームの人は他のオンラインデーターから無視されることが多かった。彼らのデートプロフィールの新規参照回数が少ないのである。こうした無視のようすはおそらく名前にかかわる生活史(無視、差別、偏見、さらには排斥)を反映している。この考察の証拠として、無視は、ネガティブネームと低自己評価、高喫煙頻度、低学歴の間を媒介していた。以上の結果は「名前による対人無視」仮説と一致している。ネガティブな名前はネガティブな対人反応を喚起し、結果として人々の人生を悪い方向へと向かわす。

Abstract
Can negative first names cause interpersonal neglect? Study 1 (N = 968) compared extremely negatively named online-daters with extremely positively named online-daters. Study 2 (N = 4,070) compared less extreme groups—namely, online-daters with somewhat unattractive versus somewhat attractive first names. Study 3 (N = 6,775) compared online-daters with currently popular versus currently less popular first names, while controlling for name-popularity at birth. Across all studies, negatively named individuals were more neglected by other online-daters, as indicated by fewer first visits to their dating profiles. This form of neglect arguably mirrors a name-based life history of neglect, discrimination, prejudice, or even ostracism. Supporting this argument, neglect mediated the relation between negative names and lower self-esteem, more frequent smoking, and less education. These results are consistent with the name-based interpersonal neglect hypothesis: Negative names evoke negative interpersonal reactions, which in turn influence people’s life outcomes for the worse.

以下は、この論文をもとに書かれた記事の翻訳

「不運な」名前の人は自尊心が低く、孤独になり、喫煙する傾向が高いとの調査結果
http://rocketnews24.com/2012/01/13/171704/
ロケットニュース24
(原文:http://www.nydailynews.com/life-style/health/badly-chosen-baby-names-lead-self-esteem-education-smoking-study-article-1.1002198#commentpostform

そこにはこんな概要が紹介されている。

名前が人生に与える影響は想像以上に大きいようだ。「不運な」名前の人は自尊心が低く、孤独になる傾向が高いと社会心理学の学術論文が発表したのだ。

論文を発表した研究者は、1万2000名の成人を対象に名前の好みに関する調査を行ったところ、大半の人が「好みではない名前の人と関係を築くよりも、むしろシングルでいる方がいい」と回答したという。

また、オンラインでデート相手を探しているドイツの男女4万7000名に写真のないメールを送ったところ、「アレクサンダー」や「シャーロット」といった人気のある名前は「ケビン」や「マンディー」のような人気のない名前よりも2倍以上の数のプロフィール閲覧数があったという。名前による人気の差は確かに存在するようだ。

研究論文の著者は「ある名前に対してどのようなイメージを持つかは、ほとんど無意識に行われます。新聞記事や物語、歴史によってイメージは作られます」と説明する。

そして、名前の影響はパートナー選びだけではないと著者は言う。1万2000名の成人を対象に行った調査に基づくと、「不運な」名前の持ち主は「喫煙する傾向が高く、教育レベルが低く、自尊心が低い傾向にある」のだそうだ。「こうした事は名前の良し悪しで全て決定されるわけではないが、名前の影響も少しはある」とのこと。

名前が人生を全て決定づけるわけではもちろんないが、その影響は予想以上に大きいものかもしれない。たかが名前、されど名前。日本でも珍名・奇名を子どもに名づける親が増えているが、それが子どもの人生に与える影響はいかほどのものか、気になるところである。
(文=佐藤ゆき)


ロケットニュースには名前に関する記事が多く掲載されている。ありがたい。


フルネームで呼んでくれてありがとう

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