2013/10/25

柳父章さん

柳父章さんの『未知との出会い:翻訳文化論再説』。

以下は、インタビュー「翻訳との出会い」からの抜粋。

 ケガレと差別。それが社会の格差を作っている。それが権力を支えている。

 翻訳というのは、そもそも「境界」で生じる言葉を考えるものです。

 中国の古典から「平」と「成」という字を持ってきて、「平成」という時代になりましたということを初めて聞いたときは、これは翻訳語の作り方と同じだな、と思いました(笑)。それが、とてももっともらしく響くんですね。

 インタビュアーの「『原子力』と『核』という言葉も、もともとは同じ西洋の言葉nuclearを、見事に二つに使い分けて……それはまた、本音と建て前、ウラとオモテという、本書の問題ともつながることですか」という質問に答えて、
 ……ウラというのは、オモテからすれば「ないことにされる」だけではなく、「見えなくなってくる」ものなのです。

このインタビューで、あの『翻訳語成立事情』が他国語訳が刊行されていることを知った。ドイツ語や韓国語に。アイルランドでも。リービさんのお姉さん、インドラ・リービさんも一部を英語に訳している。

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...