2013/12/05

久山 2012:S. Liebersonの個人名研究と日本における発展可能性

久山健太 (2012) S. Liebersonの個人名研究と日本における発展可能性 年報人間科学, 33 pp.1-14.
http://ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/bitstream/11094/4050/1/ahs33_1.pdf

要旨
 S. Lieberson は社会学領域における体系的な個人名研究の第一人者である。本稿ではまず、彼の研究から導かれた、理論的帰結を明確にする。
 第一に、個人名を社会学的に分析する意義として、social taste と流行(fashion)の動態を極めて明確に観察できる。 第二に、個人名の流行過程が下位集団ごとに異なる taste を示している事実を踏まえ、新しい個人名が人々の間で伝播する過程を説明するには「階層別モデル」が適切である。第三に、流行現象に影響を与える様々な要因のうち、外的要因と内的要因とを区別し、たとえ外的要因が存在しない場合であっても、内的要因が単独のメカニズムとして稼働することで、常に流行が変化し続けると結論づけられる。また Lieberson は、個人名の流行に対する外的要因の影響が、従来の言説では過大評価されてきたことを強調する。
 Lieberson の理論を日本で検証・発展させる上では、データの入手、文化的・歴史的・言語的背景、名前に付随する社会的属性の問題などが浮上するが、方法面でも理論面でも新たな研究の可能性が開けている。

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...