2015年5月3日東京新聞「筆洗」
サカタ・タネオ、タナカ・イサモ、ホリイ・サダオ、ヨシザキ・ゼンキチ、ヤマザキ・タカマサ…。無数に連なるカタカナ書きの名を、声に出して読んでみる▼70年前に戦争が終わった時、ソ連は57万人ともいわれる日本兵や市民を拘束し、収容所に抑留し続けた。過酷な収容生活で5万を超える命が消えた。その人たちの名前だ▼望郷の歌がある。〈逢(あ)えぬまま異国の獄舎に果つる身か子の名を壁に爪たてて書く〉内田久光。一方に、平和の世が来ても出征したままで安否不明の兵を待った人の歌もある。〈出で征(ゆ)きて君は帰らず五月雨のそそぐをみれば七年(ななとせ)を経ぬ〉松浦武子▼ロシアから提供された抑留の犠牲者名簿を基に、政府は新たに1万723人の名簿を公表した。うち身元の特定が済み、漢字で名が記された人は2,600人だ▼残る8,063人の名は、いまだ漢字という衣もまとえず、寒々としたカタカナ書きのままである。サト・タマヨ、アダチ・アイコ、クリバヤシ・ヘイイチ…。カタカナ書きの墓標がたち並んでいる▼〈やけあとのつちもめぶきてあをみたりほこなき国をはるふかみつつ〉金田一京助。矛(ほこ)なき国、戦争はしないと憲法で誓った国に訪れた、緑鮮やかな春。そんな大地を踏むことすらできなかった無数の人々の名がある。イトイ・ハルエ、マツザキ・ヨシコ、ハマダ・ミツコ…。
表記のわからない名前と読み方のわからない名前。どちらも名前になっていない。
2015/05/03
フルネームで呼んでくれてありがとう
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