2015/08/05

Et alors?(でも、それがどうかしたのかね?)

1980年代初頭。フランスのミッテラン大統領が、就任まもなく、彼の隠し子についてたずねられたときの答えだ。

これはながらく開き直り発言と思っていた。
「愛人がいたら、いけないのか」「隠し子がいたらいけないのか」。

しかし、これは「誤解」だった。
小坂井敏晶さんの論考「〈開かれた社会〉の条件」で知った(「UP」8号)。
「正しい愛の形を決めるのは社会ではない。私生活の是非は当事者の判断に任せよ」。これがミッテランの真意であり、近代と宗教の分岐点が、ここにあらわれている。
個人の行動は他者の自由を侵害しない限り、是も非もない、という近代個人主義の思想のあらわれ。だから、日本では成り立たない夫婦間の強姦罪がフランスでは、加重事由で、より厳しく罰せられる。70年代の性解放運動以降の、強制(同意のないこと)が悪であるとの世論を受け、1994年の刑法改正で変わった。