2016/08/21

構造上、無口だったかもしれない

 ネアンデルタール人も原始言語を持っていた。その言葉さえ理解できれば、われわれ現生人類とも会話することができそうだが、居酒屋に誘うことはお勧めできぬ。話は弾まず、あまり愉快な会になりそうもない。というのも、ネアンデルタール人はかなり無口だったと考えられている。おしゃべりなわれわれとは異なり、頭蓋骨や気管、口腔(こうこう)の構造上、複雑な言語音を発声するのが困難で、せいぜい叫び声やうなり声が精いっぱいだったそうだ。ネアンデルタール人と現生人類の脳の重さはさほど変わらぬが、「誰かに何かを知らせる」という能力の低さが、クロマニョン人にのみ込まれ、絶滅した理由の一つという説もある。
(2016年8月21日東京新聞「筆洗」から)

 奈良貴史『ネアンデルタール人類のなぞ』(岩波ジュニア新書)を読もうか。

フルネームで呼んでくれてありがとう

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