先月29日の東京新聞投稿欄に、中国人の「姓名の読み方、母語のままで」という趣旨の意見が載った。それに対する意見がきょうの当紙に載った。賛成意見と反対意見だ。
前者は「中国人の名前、母語をカタカナで」。
日本にはカナ文字(=表音文字)があるのだから、「国際的に通用する発音を使ったほうがよい」というもの。
後者は「母語表記では互いに通じず」。
日本語と中国語では発音が違いすぎて、似たように発音しても通じない事実、方言が多く、発音には地域差があるという事実にもとづいた意見である。日本で学ぶ留学生も、日本の漢字読みを好むとも書かれている。
ボクが数名の中国からの留学生に聞いたときは、全員「どちらでもいいです」だった。かれらは漢字の日本語読みを習熟し、日本人の中国語風発音にも慣れているからだろう。
名前は表記がすべて。表記と読みの対応関係は一義的ではない。それは日本語にもあてはまる。中国人の名前をカタカナ発音しても、投書主が書いているように、似てはいるかもしれないが、通じない。日本語として「しゅうきんぺい」と聞けば、習近平という文字が頭に浮かぶ。これがシー・ジンピンだと文字の見当もつかないし(それに相当する読みの字はないかもしれないし、同音異字も存在する)、本人にも通じない。
ボクとしては、表記つまり正しく書けることを優先したい。それをどう読むかは、その人の母語で正確に発音できるのであれば(通じるのであれば)、それでいいが、そうでなければ、読む人の属する文化での読み方で十分なのではないだろうか。その人の母語で呼んであげたいという気持ちはわかるが、残念ながら、母語もどきの発音では通じない(どうしても迷う場合は本人に聞くという手もある)。自分の名前は、この国ではこう読まれるということを知るほうが伝わりやすい。そもそもカナ文字、そしてカナ文字による発音は日本語でしかない。
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ラテン文字の名前であれば、こうした読みの問題は顕在化しない。韓国も含め、漢字文化圏だから迷うのだろう。ついでに言えば、韓国では大学は漢字で「大学校」と書かれる。それを見て、日本語の文章内でも「○○大学校」と書かれることがある。しかし、日本語の大学校は税務大学校のように、大学とは異なる(学生は公務員なので、給料が出る)。たとえば「培材大学校」は「培材大学」でよい。実際、英語では、Pai Chai Universityとなっている。Universityを大学校と訳す人はいないだろう。なお韓国では、学部相当を「大学」と呼ぶ。いっけん同じ漢字語でも、その意味は異なる。漢字で書ける名前は漢字で、それ以外は、母語に近い発音のカタカナで書くのが現実的だろう。
2017/09/07
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