2023/04/08

月末『卒業論文のデザイン』が書店に並びます


構想十年、執筆四年。本ブログの記事をふくらませて書いた本。『卒業論文のデザイン−質問紙調査による社会心理学研究』が、今月末、福村出版から出ます。

 このジャンルの後発組ですので、他の本と、二味とまではいきませんが、一味違う本に仕上げたいと思いながら書きました。その一つが卒論を相対視するきっかけに、と書いた「コラム」です。自分たちのやっていることを少し離れて考えてくれれば、との思いからですが、「卒論学」のようなものかもしれません。書きたかった(書いたもののボツにしたものも含め)トピックは、ほかにもあったのですが、今回は15点に抑えました。多いと、タイトルからますます乖離してしまうので。

【コラム】
 1 「単位」からみた卒業論文
 2 卒業論文の誕生
 3 ある社会心理学研究室の卒業論文
 4 ゼミと卒論
 5 ある社会心理学ゼミの卒業論文
 6 COVID-19と卒業論文
 7 社会心理学の発想
 8 啓発と質問紙調査
 9 回答者がいてこその質問紙調査
 10 「ソツロン」はスマホ型
 11 黒板から生まれたスプレッドシート
 12 引用文献の使われ方
 13 添削ハンコ
 14 卒論の評価基準
 15 卒論が決めた人生

【本文】
Ⅰ 卒論の準備
 卒論のリアル
 卒論が気になりだしたら
 教科書を読む
ⅠⅠ 研究の設計
 小さな研究のすすめ
 研究の手順
 研究テーマのさがし方
 型を知り手本をまねる
 リサーチ・クエスチョンを詰める
 研究法の選び方
 先行研究をさがす
 先行研究を読む
 翻訳サイトを使う
ⅠⅠⅠ 質問紙の作成
 場面としての質問紙調査
 質問紙の作成手順
 質問紙の構成
 設問の考え方
 選択式回答とデータ処理
 ワーディングのポイント
 設問の配列
 SD法を組み合わせる
 オンライン調査の質問紙
 インタビュー法を組み合わせる
 分析計画を考える
ⅠV 調査の実施
 調査対象者の人数
 オンライン調査サイト
 オンライン調査の手順
 オンライン調査の回答形式
 オンライン調査の回答データ
 調査研究と倫理的配慮
V 回答の分析
 統計ソフトの利用
 データ入力とスプレッドシート
 データチェックと単純集計
 尺度回答の処理
 数値回答の処理
 連関と相関でみる関係
 代表値比較でみる関係
 複数回答の分析
 評定回答のとりあつかい
 記述型回答の分析
VI 論文の執筆
 卒論の構成
 タイトルの付け方
 「はしがき」の書き方
 「もくじ」の作り方
 「問題」の書き方
 「方法」の書き方
 「回答者」という言葉
 「結果」の書き方
 図表の書式
 作図・作表の考え方
 図表の見本
 図表と本文をつなぐ
 「考察」の書き方
 引用と二次引用
 「引用文献」の作り方
 引用時のポイント
 引用文献の配列
 「要旨」の書き方
 付録の作り方
VII 文章の点検
 伝わる文章に
 気持ちのよい表現に
 すっきりした文章に
 推敲と校正
 提出前の最終チェック

 初めて書いた本、と言っても分担執筆ですが、それが44年前、福村出版から出した本でした。その後、同社からはもう一冊刊行。そこでは東京駅前と井の頭公園で撮った写真をカバーに使ってくれました。福村は思い出深い出版社です。

 今回の本、当初は絵本のような本を考えていたのですが(書名も『30分でわかる卒論の書きかた』みたいな)、けっきょく文章による説明が中心となってしまい、方向転換。でも、それではやはり寂しいと、担当編集者が各項目(節相当)の頭にウサギのイラストを入れてくれました。それをじっと見ているうちに、ウサギを(川浦ゼミの略称である)カワセミに変えたくなり、どうせなら、章の内容に合わせて変えたくなり、最終的に章ごとで異なるカワセミを項目タイトルに飾りたくなりました。それを叶えてくれたのは金子としこさん。横浜市大のときのゼミ生で、現在はイラストレーター。本当に卒論をやっているのではと錯覚するぐらいの出来栄えです。ぜひご覧ください。

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 私が卒論を書いたのは半世紀前。当時の計算手段は電卓。これしかありませんでした。多変量分析など思いつくわけもありません。当時は因子分析を1週間かけて行ったという伝説が流れたほどですから。私が用いた研究法は実験法。そのデータに分散分析とカイ自乗検定を適用。岩原信九郎さんの『教育と心理のための推計学』を片手に計算。

 2年後の修士論文は因子分析での処理。東大の大型計算機センターのHITACで。プログラムは芝祐順先生お手製。著書『因子分析法』の巻末にあるソースリスト(FORTRAN)を打ち込んだパンチカードを貸してくれる人がいたのです。

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 質問紙調査で卒論が書けるのはコンピュータが使えるからですね。そのことを本に書き忘れました。

 最後に。『卒業論文のデザイン』、手にとっていただければ幸いです。

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...