2011/02/17

韓国の大学事情

FDの一環で、韓国の大学事情を聞く機会があった。報告者は聖公会大学校の権さん。
韓国の大学進学率は83%と、日本の53%より30ポイントも高い(韓国の数字は2年生の専門大学も)。
◎弘益大学校の学生の対応
同大で新年初日に、清掃労働者170人を全員解雇するという事態が起きた。
http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/strike/2010winter/1294045866361Stafff
解雇の理由は労働組合を結成したからとされている。が、この解雇が社会的に注目されたのは学生たち(学生会)の対応だった。大学のイメージを失墜させるから、という事由で、解雇反対のストライキに反対したのだ。学内の軋轢が自分たちの就職に不利に働くことを懸念したからと見られている。
何年か前、高麗大学校が三星財閥の会長に名誉博士号を与えようとしたとき、同大学校の学生会が授与を阻止する事件が起きた。それによって多くの学生が除籍の目にあったが、この事件で三星グループへの就職が困難になるのではないかと懸念されたことがあった。このことが弘益大学校の学生会に上記のような対応をとらせたのは想像に難くない。

◎大学ランキングと教員身分
韓国の大学は、公的援助が1割以下で、大半が授業料収入と寄付で賄われている。その寄付を左右するのが大学ランキングである。その中に教員の研究業績も指標として含まれている。ポイントが高いのは国際学術誌(ジャーナル)への掲載数で、国内ジャーナルのそれは半分から数分の一という評価しか与えられない(研究費もそれに連動する)。結局、アメリカ中心の評価ということになる。その背景のひとつにアメリカで学位を取る教員の多さもある。国内で学位を取得する人は65%、アメリカが20%(日本は4%)。ソウル大に限るとアメリカ50%、国内34%…。
国内ジャーナルのランキングは政府機関である学術振興財団が与えることになっていて、そこで認められないジャーナルはじり貧状態。そういうジャーナルには投稿しようとする人が少ないからだ。そういうジャーナルは、そのため、学会は財団の評価を得ることに奔走する。学会の数も急増。

◎大学崩壊の可能性
学生の就職率向上、研究資金獲得のための高評価の獲得、自己の評価向上に追われる教員(短期的成果のあがる研究テーマへの集中)の台頭で、韓国の大学(教員)は「保守化」する一方だ。

このほかにも、いろいろ話があったのだが、書ききれないので、ここまで。日本の先を行っていそうな気がする。

フルネームで呼んでくれてありがとう

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