2012/09/14

仕掛けとしての名前

ふだん東京新聞を読んでいる身からすると、読売や日経は別世界。食堂で読んだ日経の、今日の文化面。著者は、写真家の藤本巧さん。
 韓国の人々の暮らしや風景を撮り始めて42年がたった。私と朝鮮半島とは生まれたときから深い縁で結ばれていた。
 私の名前「巧」は、日本が朝鮮半島を統治していた時代に、朝鮮で植林事業を行う傍ら朝鮮の工芸品を愛し日本に紹介した浅川巧にあやかっている。浅川は朝鮮を愛し、朝鮮人に慕われた人だった。私の父は十代のとき古本屋で見つけた柳宗悦の著作『私の念願』から彼を知り、男の子を授 かったら、彼のような生き方をと願って命名した。
 私が初めて韓国を訪れたのは1970年、20歳のときである。目的は浅川巧のお墓に参ること。それから雑誌『工藝』(36年)に掲載された朝鮮の工芸の足跡を辿(たど)ることにあっ た。
名前はこういう働きもしているのか。

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...