2012/10/28

ことばは変わる

『翻訳語成立事情』柳父 章
翻訳のために作られた新造語6つ、「社会」「個人」「近代」「美」「恋愛」「存在」。翻訳語として新たな意味を与えられた4つ、「自然」「権利」(ただし「権」として)「自由」「彼」(彼女は新造語)が考察の対象。
外国語は日本語にしないと多くの人に伝わらないが、日本語にした瞬間から意味がずれていく。訳者としてできることは同じ言葉でも文脈に応じて訳語を使い分けることかなという気がするが、それでは読者は混乱するかもしれない。むずかしい。新たな意味を与えられた従来からの言葉も扱いが難しい。「自由」とか「市民」とか。

たまたま借りたもう1冊も言葉に関する本だった。

『歴史を考えるヒント』網野善彦
冒頭から著者は飛ばす。
第1章「日本」という国名。
第1節 歴史と言葉
日常、われわれが何気なく使っている言葉には、実は意外な意味が含まれていることがあります。あついはまた、われわれの思い込みによって言葉の意味を誤って理解していることもしばしばあるのです。歴史の勉強をしていると、そういうケースに直面することが少なからずあります。
そして最初に紹介される例が「時宜」。

後半、奇しくも「自由」や「自然」が出てくる。柳父さんの本も出てくる。そして最後。「支配」に話が及ぶ。支配は本来「配分」の意。で、ドイツ語の「ヘルシャフト」の訳語に用いられてから、上下関係を意味する語として定着したと説く。

それにつけても、私たちには何十万年後まで正確に伝わってくれないと困る問題をかかえている。大丈夫だろうか。

フルネームで呼んでくれてありがとう

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