2014/05/17

西村伊作

新宮で偶然見かけた西村伊作の自宅
その彼の伝記、黒川さんの『きれいな風貌』を読み終えた。
西村伊作「伝」なのだが、自伝に近い詳述。
そうそうたる人物や大事件にからむ、ドラマチックな一生の果てのことば。
「我に益あり」。
自伝の書名でもある。
「私はプロレタリア独裁の下でも君主政権下でも自由主義や民主主義の社会の中でも、どんな政府の下にでも自分が置かれた場において自分の利益になることを見出し、自分を楽しくさせることができると思う」(1960年)。
花森安治の生き方に近い。
桜井哲夫さんは『可能性としての「戦後」』の中で、花森の「職人」性にふれ、評価しつつも、「逸脱」に言及する。
私益であれ、職人であれ、その追求を極めると、それはやがて公益、改革に変わる。

彼の子の名前と由来(本書から)

  1. アヤ(1908年生まれ)
  2. 久二(1910年生まれ)二人目の子どもなので男女の差別なく「二」。生まれたとき、「キュー」と声を上げて泣いたので「久」。
  3. ユリ(1912年生まれ)
  4. ヨネ(1913年生まれ)
  5. 永吾(1915年生まれ)
  6. ソノ(1918年生まれ)
  7. ナナ(1920年生まれ)
  8. 八知(1922年生まれ)「はっち」と読む。
  9. クワ(1927年生まれ)第九子で「九和」に違いないのだが、故郷下北山村桑原の「桑」であり、この年に没する変わり者の叔母「くわ」のことを意識に置いていたのも確かだろう。伊作は「郷里がつなぐ同族に背を向けてしまうことのない人」であり、一族たちの要として、「繰り返し、そこに戻って、土地と人とのつながりをたもって生きようとした」。

フルネームで呼んでくれてありがとう

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