2015/01/27

機械にニンベンをつける

『グラフィケーション』最新号

小関智弘さんと吉岡忍さんの対談「ものづくりに生きる」から。

小関さんは、見習工時代に先輩から言われた言葉で「機械にニンベンをつけて仕事をしろよ」が一番強く印象に残っているという。マニュアルどおりのことをやっても進歩はないという意味だ。以下は抜粋。
小関 それからずっと後になって、何と豊田佐吉の会社「豊田自働織機」という社名の「ジドウ」にニンベンがついていることを知って驚きましたね。織機を輸出することになり、社名を英語表記しなければならなくなったとき、ニンベンを取って「オートマチック(自動)」という英語を使わざるを得ないと言われたとき、佐吉が非常に残念がって、私のつくった機械は動くんじゃない、働くんだと言ったそうですが、なるほど、職人さんたちがニンベンをつけろと言ったのには、そういう深い意味があるんだなとわかったんです。
吉岡 パチンコ台のクギが並んでいる部分だけを合板で作っている工場があって見学させてもらったんですが、そこでは穴をあけるのは機械がやっている。ところが、そこで出る木屑を吹き飛ばす作業は人間がやるんです。圧縮空気の出る器具を持って。人間の技能としては何も積み重なっていかない。 
吉岡 町から工場が消えていき、見えるものは製品だけになった。技術はどんどん遠くなり、生産者と消費者の分離が始まっていく。だから、それを作っている家庭が見えるような場所をつくってほしい。
いまや日本語表記も、豊田自「動」織機

フルネームで呼んでくれてありがとう

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