東京新聞 2015年2月19日夕刊
失われた街の日常風景や思い出を残したい。東日本大震災で被災した気仙沼市出身の慶大院生、小野里海(さとみ)さん(23)が、震災前の街並みの写真と、市民40人にインタビューした言葉でつづった本を自費出版する。3月の出版披露会に向け、「震災までは確かにあった、気仙沼の人々の営みを思い出すきっかけとなる本にしたい」と語る。(安藤恭子)ここにも紹介記事が載っている。
小野さんは高校卒業まで気仙沼市に暮らし、震災発生時は米国留学中。海岸から1キロ離れた鹿折(ししおり)地区の実家は津波で全壊。周辺は大規模火災。震災から1カ月後、帰省した小野さんは避難所を回り、親戚の男性や同級生、近所の人たちが亡くなったことを知った。
自身の名前「里海」は里山や漁港がある気仙沼の風景が由来。「大好きな故郷のため、何ができるのだろう」。もやもやした思いを抱えたまま時間ばかりが過ぎた。
「ここ、なんだっけなあ…」。気仙沼に帰省した昨夏、建物がまばらな市内を車で走っていた父の秀一さん(58)が発した言葉に「故郷にずっといる父でも忘れてしまうんだ」と、はっとした。震災前の町や住んでいた人たちの記憶が消えてしまう前に、本にして残そうと思い立った。(一部改変)
「気仙沼の記憶を未来へ 大学院生ら本作り始動」河北新報 2015/1/5