2015/06/01

今は亡き二人の……

天野祐吉と多田道太郎の対話(『さよなら広告 さよならニッポン』、Pp. 223-251)。

「ネーミングは宇宙である」の中で、「名詮自性」が紹介されている。
多田 日本でも、江戸時代に「名詮自性」という言葉がはやったらしいのね。もともとは中国からきたものですけど、名前が自分のアイデンティティを明かしている。(中略)そういう思想が、江戸も後期になると出てきている。「南総里見八犬伝」なんかにも、それは色濃く出ているんです。
天野 親は子供に、ある願いをこめて名前をつけますね。名前というのはあとからつけた単なる記号のようでいて、その実、その記号にかなり支配されたりするものなのかもしれない。
多田 (略)親がある意思を押しつけると、子供はそうならざるえなくなったりする。それが親にとっては快感なんでしょうね。
命名の快感か。考えたことがなかった。これも名前経験に加えよう。

この「対話」では、ゴシップの語源がゴッドシップ(ゴッドマザー)という話も出てくる。

参考 『忌み名の研究』(穂積陳重)



フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...