2015/09/05

『民を殺す国・日本』

大庭健の新刊
副題は「足尾鉱毒事件からフクシマへ」。途中、日清・日露、大戦、チッソ(水俣病)を経由する。

「国が決めた」「すべてを考慮した」「検証のなさ」「誰も責任は取らない」「気の毒だが……」と、戦前と戦後が切れ目なく続く。
「国の定めたこと」という呪符によって追い払われ、聞き届けられずに漂っている呻きの気配を察したなら、とにかく立ち止まって耳を澄ますこと。これがポスト3.11を生きる者の課題である。
日本は富国強兵で欧米列強をモデルにしてしまったが、北欧を範にしていたら、国土を広くしようとか思わなかったのだろうなと大庭さんは想像する。自著に『デンマルク国の話』があるように、内村鑑三はデンマーク(農林立国、酪農立国)に注目していた。

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...