ボブディランがノーベル賞を受賞した。
彼の曲に「ライク・ア・ローリング・ストーン」(1965)がある。
主人公Miss Lonelyの転落ぶりが、
To be without a home
Like a complete unknown, like a rolling stone
と転がる石にたとえられる。
Rolling stone gathers no moss(転がる石に苔むさず)のRolling stoneである。
しかし、rolling stoneは別のニュアンスでも使われる。
「ライカはローリング・ストーン」、作詞松山猛。
「ザ・フォーク・クルセダーズ 新結成記念 解散音楽會」(2002)で、各自が宝物を取り上げ、それをローリングストーンと形容する。
ライカ(加藤和彦)、有機野菜(坂崎幸之助)、九州大学(北山修)、……とつづく。最後はワイフ(加藤和彦)。本当の歌詞はよくわからない、アドリブ風。
最後はディランの「風に吹かれて」(1962)のフレーズで終わる。ディランを意識した詩であることが伝わってくる。
この曲では、ローリング・ストーンは前向きの意味に使われている。「ライク・ア・ローリング・ストーン」のローリング・ストーンとは対照的だ。
研究社新英和中辞典には、こう書かれている。
rolling stone
ころがる石;住所[職業,仕事(など)]を次々に変える人。A rolling stone gathers no moss. 《諺》 ころがる石にはこけが生えない 《★【解説】 商売変えは損あって益がない;絶えず恋人を替えている人は真の愛が得られない[結婚できない];《米》 では、また絶えず活動している人はいつも清新だ、の意に用いる》。
ローリング・ストーンの、転がるようすに注目すれば、不安定なニュアンスをともない、転がり続ける結果に注目すれば、古びない(苔生さない)というニュアンスを帯びる。同じローリング・ストーンなのにおもしろい。
星野博美さんの『転がる香港に苔は生えない』の香港は2047年まで転がり続けるのだろうか。一国二制度(一国両制)は2047年までだ。