2017/01/29

卒論の書き方15:「傾向」?

 仮説で「傾向」という語を見かける。

 「ゲームにはまっている人は社会への関心が低い傾向にある」

 「関心が低い」であれば、非ターゲット層と比較すれば、関心指標を設定すれば、「証明」できる。

 しかし「関心が低い傾向にある」となった途端、そもそも何を言いたいのかも不明だし、どうすれば証明できるのだろう。

 何を持って傾向とするのか。

 「傾向」ということばは日常的に用いられる。デジタル大辞泉にはこうある。
1 物事の大勢や態度が特定の方向にかたむくこと、または、かたむきがちであること。「最近の消費者の傾向」「彼は大げさに言う傾向がある」
2 思想的にある特定の方向にかたよること。特に、左翼的思想にかたよること。「傾向小説」
3 心理学で、一定の刺激に対して、一定の反応を示す生活体の素質。
 仮説に登場する「傾向」は1番目の用法だろう。この意味に従えば、基準点ないし中立点があって、そこからどちらかにふれることが「傾向」と読み取れる(ただし用例が怪しい)
 曖昧な語は研究者自身が定義するか、用いない、にこしたことはない。

2019年7月14日改訂

フルネームで呼んでくれてありがとう

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