大学はすべて芸大がいいかもしれない。と思わせる『最後の秘境 東京藝大』。
いまや学内に産学連携センターができるほどの状況だが、浮世離れしていてこそ大学。と思う身からすると、芸術系大学を最後の秘境にしたら、まずい。
「学芸」arts and sciencesとは言い得て妙だ。日本では、これを教員養成系大学の名称に適用してしまったために、狭く解釈されているかもしれないが、学芸、芸学の発想は大学にふさわしい。大学で無理なら、学部レベルで実現する。
名前の話が出てくる。
「ある時、坂本龍一さんの曲を知って、名前が同じということもあって、憧れたんですね。それで今は作曲家を目指しているんです。夢は大きく、アカデミー作曲賞を二回取ること、って思ってます」。1度だけでも大変だが、2度受賞者は最近でもいる。
ハワード・ショア(「ロード・オブ・ザ・リング」と「王の帰還」)、グスターボ・サンタオラヤ(「ブロークバック・マウンテン」と「バベル」)。
歌手→小説家→お笑い芸人→ピアニストと「迷走」してきた、作曲科3年の小野さんの話。
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インタビューの教科書にもなっている。抽象的質問では抽象的答えが返ってくる。そこを著者はつっこんだ質問をする。