2017/11/04

「子の名付け、「胱」はキラキラ?」

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(ジャーナルM)子の名付け、「胱」はキラキラ?
■MOM’S STAND(マムズ・スタンド)2017年11月号

2017年11月2日19時36分

 子どもの名前をどうやって決めましたか? 漢字の読み方が分かりにくいキラキラネームは、何かと話題になります。34歳の記者(毛利光輝)も漢字がキラキラしている上、「戦国武将の子孫ですか?」と幾度となく聞かれ、そのたびに「違います」と説明するのが疲れます。最近の名付け事情はどうなっているのか気になり、取材しました。

 千葉県佐倉市の父親(34)は、一昨年生まれた長男に「晴陽(はるひ)」と名付けた。参考にしたのはウェブサイトの情報。姓に合う名前の候補が出ていたり、画数で姓名判断ができたりするなど様々なサイトがあり、それらを見ながら、妻と相談して決めた。

 「仕事の移動中など、スマホで名前の候補をひたすら探した。知り合いの子とかぶらないように意識もして、結構迷いました」と振り返る。

 記者も試しに自分の姓を入力し、運勢が良い名前が出てくるサイトで調べると、「碧兎(あおと)」「神友(かみゆ)」「綺亜(きあ)」など候補がずらり。名前が多様化したのも、こうした情報が一因かもしれない。

 戸籍法で名前は「常用平易な文字を用いなければならない」と定め、使える漢字として計2999字を規則で指定している。ただし漢字の読み方は自由。「一二三」と書いて「ワルツ」「ドレミ」と読むなど漢字本来の読みではないあて字も認められている。


 出産・育児雑誌などで「たまひよ」ブランドを展開するベネッセコーポレーションは毎年、赤ちゃんの人気名前ランキングを発表している。昨年は約1万8千人を調査し、男の子は「蓮」(れん)、女の子は「陽葵」(ひまり)が最も多かった(読みは主な例)

 同社の藤森園子さんは「『生まれたら○○くんと呼びたい』などの理由で、最近は名前の音や読みを先に決め、あとから漢字を選ぶ方が多いです」と話す。同社の名付けに関する本でも3年ほど前から、音や読みから名前を探すコーナーを一番先に出したものもあるという。

 人気の読みでは、男の子は8年連続で「はると」がトップ。女の子は「はな」。特徴的なのは、同じ「はると」の読みでも漢字の組み合わせは「陽翔」「悠人」「晴斗」「大翔」「晴翔」など10種類以上にのぼることだ。藤森さんは「漢字で親の願いや個性を表す傾向が強まっているようです」と話す。


 一方、名前を正しく読まれずに苦労したという人もいる。

 「中学生ごろまで自分の名前が嫌でした」。東京都内の大学3年生の女性(22)は話す。名前は「茉祐」。読みがなは「まゆう」で、初対面の人には毎回、「なんて読むんですか」と聞かれたり、「まゆ」と呼ばれたりして、「いちいち説明するのが面倒だった。なんで『う』があるんだろうって」。

 両親からは、姉の名前と同じように「う」で終わった方が響きがいいからつけた、と聞いた。なかなか好きになれなかったが、年を重ねるにつれ、「初対面で名前を話題にできるし、覚えてもらいやすい」と愛着がわいた。ただ将来、自分の子供が生まれたら、「読みやすい名前がいいなと思います」。

 漢字の研究者である早稲田大の笹原宏之教授の講義でも、ここ数年、学生に質問すると「自分の名前が一回も正しく読まれたことがない」という声が増えてきたという。

 笹原教授は、親が名前の漢字を選ぶにあたって、一般に知られていない典拠から探し出すことは昔からあるが、近年、意味や成り立ちを考慮せずに「見た目やイメージだけで選ぶ名付け親が増えている」と懸念する。

 笹原教授が2004年に国が定める人名用漢字を増やす改訂に携わった際、命名者から役所に使いたいと要望があった漢字を調べると「胱」があったという。

 尿をためる「膀胱(ぼうこう)」で使う漢字で、月は「にくづき」という部首。本来は「肉」の象形で、「肺」や「肝臓」などの偏と同じだ。お月様の月と異なるが「月と光でロマンチックなイメージを持った人がいたのではないか」と推察する。

 他にも「生臭い」という意味を持つ「腥」が何件もあった。こちらも見た目から「月」と「星」で良いイメージを持ち、「せい」という名前に使おうとしていたのではないかという。

 現時点で、この2字は使用が認められていない。

 最近はパソコンやスマホでひらがなを変換すれば、知らない漢字も出てくる。笹原教授は「すてきな漢字を見つけたからと、感覚的に名付ける人が増えている。名付け親は、その名の子どもと周囲がどんなふうに思うのか、よく想像してみることが大切ではないでしょうか」と話す。

(毛利光輝)


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フルネームで呼んでくれてありがとう

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