ボクもときどき取り上げる。が、なんとなく臨場感がない。『久米宏です』で、こんな文章に出会った。
86年1月28日、米国のスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故が起きた。事故は世界中の人々がテレビで見守る中、チャレンジャー号が打ち上げ後73秒で爆発炎上し、民間人初の女性教師を含む7人の乗組員全員が死亡するという宇宙開発史上最悪の大惨事となった。この文章にある「73秒」。この一言があるだけで、人々の驚いたようすが伝わってくる。「直後」や「すぐ」では、ピンとこない。
それにしても、社会心理学の教科書で出てくる事例で日本のものはまず見かけない。集団思考でも、日本軍や原発事故と問題事例は事欠かないし、あまり古いと、ましてや外国の例では他人事のように感じられ、お勉強で終わってしまう。値上げでも、最初高めに出して、あとから批判に応じて少し下げる「ドアインザフェイス」の例はあるし。
同書には、インタビューの話も出てくる。以下はその一部。
質問は最初の一つ二つを考えておき、あとは成り行きに任せる。要するに雑談だ。雑談だから脱線を恐れない。一つのテーマに沿った会話など日常ではありえない。他愛のない話をして、それを見ていた人が感心したり考え込んだりする。そんなインタビューが僕の理想だった。もちろん、テレビでそのまま流れるインタビューという条件はある。これが文字で読まれるものであれば、インタビュー自体は「雑談」であっても、そのまま書くわけにはいかない。雑談で終わってしまうからだ。