https://www.asahi.com/articles/ASM5P3F55M5PUCLV003.html?iref=comtop_8_07
「先に来るのが名だと誤解されないように、姓を全て大文字にしたり、姓と名の間にコンマを打ったりするなどする方法もあると例示している。答申によると、中国や韓国、ベトナムなどアジアの数カ国とハンガリーで姓・名の順が使われているという」。
文化庁のこのガイドラインは日本独自になりそう。韓国の文在寅大統領はMoon Jae-inだし、中国の習近平主席はXí Jìnpíng(クレジットカード上の表記もそうなのか、はわからない)。大文字もカンマも使われていない。
名刺の英文名はそれで済むかもしれない。しかし口頭で自己紹介するとき、大文字やカンマはどう機能させるのだろう。それとも、名→姓のまま? ローマ字という表記の問題と、文化としての問題とが混同されている。
中国も韓国も以前から姓名の順だった。つまりローマ字は単なるルビのレベルでとどまっていた。しかし日本はローマ字で書くなら、順序も英語風にすべきと、順序まで変えてしまった。日本政府の劣等感の表れに見える。その点、同じ姓名文化圏の中国と韓国がローマ字表記でも順番を変えなかったのはエライ。
ローマ字表記を英語と考えるかルビと考えるかで姓名の扱いは変わる。混乱するだろうね。外国人には日本語名の知識がないので、言葉を見ただけでは、それが名字なのか名前なのか判断できないから。
今回の文化庁の呼びかけは「日本スゴイ」と連動していそう。住所表記はどうするのだろう。
呼びかけの詳細を知りたく文化庁のホームページにいったが、報道発表のリストに載っていない。記事リリースと同時に速報でもいいので、掲載してほしい。
【参考】国際社会に対応する日本語の在り方(答申)から
2000年12月8日 国語審議会答申
2 姓名のローマ字表記の問題
(1) 姓名のローマ字表記の現状
日本人の姓名をローマ字で表記するときに、本来の形式を逆転して「名―姓」の順とする慣習は、明治の欧化主義の時代に定着したものであり、欧米の人名の形式に合わせたものである。現在でもこの慣習は広く行われており、国内の英字新聞や英語の教科書も、日本人名を「名―姓」順に表記しているものが多い。ただし、「姓―名」順を採用しているものも見られ、また、一般的には「名―姓」順とし、歴史上の人物や文学者などに限って「姓―名」順で表記している場合もある。欧米の報道機関等では、日本人自身の慣習を反映して「名―姓」順で表記することが一般的である。
しかし、近年では、本来の形で表記すべきだとする意見も多く聞かれ、名刺等の表記を「姓―名」順にしている人なども見られる。文化庁の「国語に関する世論調査」(1999年)では、中国人や韓国人の名前は英文の新聞や雑誌の中でも自国での呼び名と同じ「姓―名」の順に書かれることが多いことを述べた上で、英文における日本人の姓名表記について尋ねたところ、「『姓―名』の順で通すべきだ」(34.9%)とした人がやや多く、「『名―姓』の順に直すのがよい」(30.6%)、「どちらとも言えない」(29.6%)もこれに拮抗する結果となった。
(2)姓名のローマ字表記についての考え方
世界の人々の名前の形式は、「名―姓」のもの、「姓―名」のもの、「名」のみのもの、自分の「名」の親の「名」を並べて個人の名称とするものなど多様であり、それぞれが使われる社会の文化や歴史を背景として成立したものである。世界の中で、日本のほか、中国、韓国、ベトナムなどアジアの数か国と、欧米ではハンガリーで「姓―名」の形式が用いられている。
国際交流の機会の拡大に伴い、異なる国の人同士が姓名を紹介し合う機会は増大しつつあると考えられる。また、先に記したように、現在では英語が世界の共通語として情報交流を担う機能を果たしつつあり、それに伴って各国の人名を英文の中にローマ字で書き表すことが増えていくと考えられる。国語審議会としては、人類の持つ言語や文化の多様性を人類全体が意識し、生かしていくべきであるという立場から、そのような際に、一定の書式に従って書かれる名簿や書類などは別として、一般的には各々の人名固有の形式が生きる形で紹介・記述されることが望ましいと考える。
したがって、日本人の姓名については、ローマ字表記においても「姓―名」の順(例えばYamada Haruo)とすることが望ましい。なお、従来の慣習に基づく誤解を防ぐために、姓をすべて大文字とする(YAMADA Haruo)、姓と名の間にコンマを打つ(Yamada, Haruo)などの方法で、「姓―名」の構造を示すことも考えられる。
今後、官公庁や報道機関等において、日本人の姓名をローマ字で表記する場合、並びに学校教育における英語等の指導においても、以上の趣旨が生かされることを希望する。
余談だが、文中のローマ字表記で苗字と名前の間の空白が全角になっていた(Yamada Haruo)。ので、上記の引用では半角に直した。