ちょっと長いが、以下に「社団法人日本心理学会倫理規程」からの抜粋を引用する。
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/09/rinri_kitei.pdf
第2章 研究と発表における倫理
2.1. 研究
2.1.3. 調査研究
調査研究の方法は,調査の種類や内容,調査対象によって多様だが,それぞれ特有の観点からの配慮が必要な場合がある。ここでは,はじめに,主として質問紙を使用した調査研究について,ついで面接法による調査研究について取り上げる。質問紙法と面接法の実施方法に違いはあるものの,調査実施者は,調査対象者の尊厳と人権を守り,調査対象者が不快な思いをしないように努めなければならない。
1. 調査計画と内容の倫理性
調査研究にたずさわる者は,調査計画の立案,調査内容の構成,また調査票の作成にあたって,調査に含まれる各質問項目の内容および表現が,特定の立場や考え方を強調していないか,特定方向に回答を誘導していないかなど,慎重かつ厳密に検討し,中立性を保つよう心がけなければならない。
2. 倫理委員会等の承認
調査研究にたずさわる者は,原則として,調査の実施に先立ち,自らが所属する組織および調査が行われる組織の倫理委員会等に,具体的な調査計画を示し承認を受けなければならない。
3. 調査対象者のプライバシーへの配慮と不利益の回避
調査研究にたずさわる者は,具体的な調査の実施計画と調査の内容に関して,プライバシーへの配慮が十分なされているかどうかを検討しなければならない。また,調査の実施によって,調査対象者およびその関係者になんらかの不利益が生じる可能性についても考慮しなければならない。不利益が予想されるときは,直ちに調査の実施計画を中止するなど,適切な手続きをとる。
4. 調査対象者の選択と調査の依頼
調査対象者は,研究目的を考慮して適切に選択し,調査対象者には,調査の対象として選ばれた理由を明確に説明する。調査の依頼は,調査対象者が調査に対して疑念をもつことがなく,快く協力できるよう丁寧に行い,参加は強制的なものではなく任意であることを伝えなければならない。
5. 質問紙調査におけるインフォームド・コンセント
調査研究にたずさわる者は,調査対象者に対して,調査の目的や内容をできるだけ正確に説明し,調査実施の正当性について十分な理解を得なければならない。また,調査への回答が,無記名回答か記名回答かを質問票に明記し,記名回答を求める場合は,その理由と記名による不利益が生じないことを説明する必要がある。さらに,調査対象者が調査への参加をあらかじめ同意している場合でも,各質問項目への回答は任意であることを事前に伝えなければならない。
6. 調査責任者・調査実施者の明記
調査票には,調査責任者あるいは調査実施者の氏名,所属組織,また照会先等を明記 し,調査対象者やその関係者からの問い合わせができるようにしておく。また,調査対象 者やその関係者から寄せられる問い合わせに対しては,正確かつ丁寧に答える。
7. 調査データの管理
調査で得られたデータは,紛失,漏洩,取り違えなどを防ぐために,厳重に保管し管理しなければならない。また,調査データは,研究目的以外には使用しない。
8. 調査結果の報告
調査研究にたずさわる者は,調査結果を知りたいと望む調査対象者に対して,可能な範囲で調査結果の報告をすることをあらかじめ約束し,調査研究の終了後にこれを実行しなければならない。
9. 調査対象者の個人情報の保護
調査によって得られた個人情報は,調査対象者のプライバシーを守ることを優先し,調査対象者の所属する集団・組織や関係者に漏れることがないよう,調査責任者によって厳重に保管されなければならない。なお,調査対象者の個人情報は,研究上の必要性が消失した場合には,すみやかに廃棄する。
10. 面接調査における質問項目の表現
面接調査研究にたずさわる者は,面接調査対象者に不快感や不利益が生じないよう十分に配慮する。たとえば高齢者を子ども扱いすることなどによって,面接調査対象者が自己イメージを損なうことのないように,面接者は質問内容の構成,また言葉づかいや表現などに注意する。
11. 面接調査におけるインフォームド・コンセント
調査責任者・調査実施者は,面接調査対象者に対して,調査の目的や内容について十分 な説明を行い,理解されたかどうかを確認した上で,原則として,文書で同意を得なけれ ばならない。説明を行う際には,面接調査に関して誤解が生じないように努め,面接調査 対象者が自由意思で調査への参加が決定できるよう配慮する。また,面接調査対象者に は,面接を途中でやめる,答えたくない質問には答えない,調査結果の報告を求めるなど の権利や,自己情報アクセス権・コントロール権があることも伝える。
12. 面接調査における代諾者が必要なインフォームド・コンセント
18歳未満の面接調査対象者には,本人のみならず,保護者や学校関係者に対しても調査 の目的や内容について十分な説明を行い,理解されたかどうかを確認した上で,原則とし て,文書で同意を得なければならない。また,たとえば,子ども,障害や疾患を有する 人,外国人など,認知・言語能力上の問題や文化的背景の違いなどのために,通常の方法 の説明では調査・面接内容の理解を得られたと判断できない面接調査対象者の場合には, 理解を得るために種々の方法を試みるなど最善を尽くす必要がある。その努力にもかかわ らず自由意思による調査・面接参加の判断が不可能と考えられる場合には,保護者や後見人,あるいは施設の責任者や医師などの代諾者に十分な説明を行い,原則として,文書で代諾者から同意を得なければならない。
13. 面接調査の記録における個人情報の管理
面接調査の記録は,個人情報が外部に漏れないように,厳重に管理しなければならな い。また,調査責任者・調査実施者がどのような管理方法をとるかについて,面接前に面 接調査対象者に対して明らかにしておくことが望ましい。