冒頭の「つめこむ」以外、記憶に残っていなかった。
これは乗客を大豆に見立て、どうすれば乗降がスムーズにいくかをシミュレーションした議論だ。物理の苦手な高校生に、こういう発想は新鮮だった。人間行動が物理学の対象になることが。
再読で、今回ハッとしたのは「ロバはなぜ死んだ」。
A「腹をすかしたロバが、乾草の山が二つあるのを見つけた。早速食べようと思ったが、二つとも全く同じ大きさ、同じ距離にあって、どちらの方を食おうかと決めることができないままに、とうとう餓死してしまった」という話。
B 知ってるよ。それで?
A そこで君は、これを本当だと思うか。つまり実際におこり得ることだと思うか?アナログのストップウォッチの話もこの中に出て来る。
一度カチッと押すと秒針が動き出し、もう一度押すと止まって、もう一度押すと現位置に戻る。その戻るとき、止まった位置によって近い方を通って戻る。ところがちょうど真ん中で止まると、どっちにも戻らないでそのまま。本題(確率がゼロでない値をとるか)に戻ろう。迷う(ゼロでない値をとる)確率は小さい。が、その間にロバは餓死する。
ロバのたとえ話で思ったのは投票行動。つまり、どの候補も同じに見え、誰にも投票できない状況。
選挙運動時の公約など、誰も本気で実践しようなんてこれっぽちも思っていないし、できっこない。所詮は、お金目当て。と考えた途端、どの候補者も同じに見えてきて、誰にも投票できない。だから投票できない、投票に行かない。その可能性が浮かんだからだった。どうかな。
政治家の顔が見えることは大事。同じでないことを見せる人を増やす。
この項、著者はT。つまり高橋秀俊さん。元良勇次郎(心理学者)の孫である。