陶芸はそば打ちと並んで退職後の趣味候補によくあがる。が、以下はそれとは関係のない話。
著者の父親は倉敷市で教師をしていた。
父は教師を定年まで勤めた。酔って上機嫌になったときに聞いた話がある。小学校の校長時代のエピソードだ。校内を見まわっていると、低学年の児童が石段にひとり腰をおろしていた。ひとり腰をおろしていた理由がなんとなくわかる情景だ。
「○○くん、授業中なのにどうしたんだ」。生徒は、それには答えず目を見開いた。
「どうして、ぼくの名前をしっとるん?」
「そりゃあ、○○くんはこの学校の生徒じゃから、知っとぞ」
児童は、なんども「どうしてしっとるん?」とくりかえしたそうだ。「あの、まん丸に目を見開いた顔は、いまだに忘れられん」
父のいる学校に通った児童はしあわせだと、身びいきかもしれないが、そう思う。