2019/10/30

連載:名字・名前と漢字

名字・名前と漢字(笹原宏之

 日本人の名字はおもしろい。「服部」をハットリ、「小鳥遊」をタカナシと読むのはなぜ? 「大谷」はオオタニ・オオヤ、「中島」はナカジマ・ナカシマと、読み方が分かれる理由とは? 日本には、中国の王(ワン)氏、韓国の金(キム)氏のような漢字一字の音読みの名字はないのか? 「佐藤」と「藤田」などの人口が、地域によって異なるのはなぜ? ハンコからはみ出すほどの日本で最も長い名字とは?

 下の名前は、さらにおもしろい。「苺」は2004年に解禁され、すでに幼稚園では当たり前になってきた。「一二三」はワルツ。では、「三二一」は何と読む? 森鷗外は自分の子供に於菟(おと)、茉莉(まり)、杏奴(あんぬ)、不律(ふりつ)、類(るい)と欧風の名をつけた。では、今日の命名と鷗外の頃の命名とは、何が違うのか?

 この連載では、日本語を構成する重要な固有名詞である名字と名前のおもしろさ、その実態と背景に迫っていく。


第1回 世界の名字事情―日本人の名字を知るために

第2回 漢字圏の名字事情(1)―中国と台湾

第3回 漢字圏の名字事情(2)―韓国とベトナム

第4回 ローマ字圏の名前

第5回 漢字圏の名前

第6回 日本に多い名字とは?(1)

第7回 日本に多い名字とは?(2)
 日本の名字ランキングを作った男、惣郷正明の調査から

第8回 鈴木か、佐藤か―日本に多い名字とは?(3)
 戦後行われた名字調査の歩み

第9回 民間の名字ランキング―日本に多い名字とは?(4)
 企業・個人がデータを使って算出した名字ランキングの軌跡

第10回 日本の名字と名前
 日本の名字や名前に関する昨今の状況

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...