2025/02/18

呼ばれてこそ

さくらももこ 1999『そういうふうにできている』新潮文庫(ハードカバーは1995年刊)。自身の妊娠と出産体験を綴ったエッセイである。

「命名」

 まずは自分の名前で運調べ。ペンネームのさくらももこは吉。念のため、旧姓のほうを調べると、こちらは苦難や失望、挫折が待ち構えているという。だが、本名よりペンネームや芸名の運がよければ、次第にそちらに傾くとあり、得心する。「ペンネームが主流になるにしたがい、運も良くなっていったように思う」。

「名前の画数による姓名判断以外に、私は名前のもつ音(おん)の影響という事を前から考えていた。長い間呼ばれ続ける事によってその人全体に沁み込んでゆき、人格にも大きな影響を与えるのではないか」。

 夫と相談しながら決まった名前は結果として知人と同名。運勢も意味も音も一番良い。しかも、その知人は才能もあり、素晴らしい人。実際の名前を知りたくなるが、本には書かれていない。「どうか御容赦いただきたい」。

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名前は呼ばれる機会、口にする機会のほうが、見せられる機会や書く機会より多い。