日経「私の履歴書」で、大石芳野さんの連載が始まった。第1回は2月1日、全27回。その第6回「古代の魂」で、ドキッとする記述に出会った。1971年、パプアニューギニアに撮影で出かけたときの話である。
夢中で撮っていたある日、集落に住む男性に突然、妙なことを聞かれた。「日本人は人を食うのか?」
一瞬、なんのことかわからなかった。が、次の一文で、その疑問が解けた。
パプアニューギニアは太平洋戦争中、大規模な戦場となった地である。日本軍の物資補給が破綻し、兵士は飢餓に苦しんだ。この男性は「日本の兵隊が人を食べているのを見た」と言う。/彼の表情に嘘やからかいは感じられない。たしかにその情景を見たのだろう。私がそこに暮らす人々に深く魅惑され、魂の故郷のような愛着をおぼえていた地に、戦争の、それも日本人が関与した戦争の影が刻まれていることに強いショックを受けた。
大石さんがどう応じたのかは書かれていないが、私だったら、どうだったろうか。私も書けそうにない。