誠信書房から、seishin preview110号が届いた。seishin previewはいわゆる出版社のPR誌。ほどよい間隔で届くので、たまらないで済む(いま調べたら季刊だった)。
巻頭エッセイが毎号秀逸で、今回もいい。
三浦丈典という若手建築家の「大きな屋根の下で―子どもからお年寄りまで」。
いま、母はいわゆる高齢者専用賃貸住宅に住んでいる。カーテン越しの相部屋でもないし、スタッフの人の世話で日常的には困らない日々を送っている。親切にしてくれる同居者もいるし、周りから親しまれてもいる。「ふくぶくしい顔しているね」とよく言われると、よく話してくれる。家族としてもうれしいが、彼の一文を目にして、はっとした。一見快適なのだが、何かが足りない。そう何かが。それを彼はうまく表現してくれている。
これまで過ごしてきた人生とは関係なく、ぶっきらぼうに名字で呼ばれ(略)周りから何かを頼まれたり期待されたりもしない毎日。高齢者の生活空間研究の第一人者である外山義(とやまただし『自宅でない在宅』2003)は、そういった状況に直面した高齢者が、哀しみや寂しさを和らげるために脳が唯一できる自己防衛システムが「ぼけ」であると言いました。
そんななか、彼のところに設計依頼が届く。それぞれがいろいろな役割を担い続けられる住み方とは。
調べると、外山さん、52歳という若さで亡くなっている。同書は遺作。
★おまけ 108号まではサイトに載っている。