紀田順一郎 1988 日記の虚実 新潮社
を読みました。以下はメモ。
葛原勾当日記 「元来日記は自分だけのものであるが、心のどこかで他人に見られることを予期ないし期待しているのであって…」「『私』というものを、ある程度私性を保ったまま公にする一つの方法であって…」
盧花日記 「理由もなく、とつぜん日記をつけはじめるということはない」。土左日記は解放感、源氏物語が読めるという昂りから更級日記は書かれた。「盧花の日記の特質は、昨日の日記を今日書くというところにあった。そのために盧花の意識が後ろ向きになったとまではいえないが…『昨日』(過去)をようやく克服できたとき、すでに『今日』には忘れ去られていたという典型であろう」
戦争の日記 「人が日記をつける動機、それは風景が変わる予感をいだいたときにほかならない」
日記の研究 当日か翌日か。毎日か否か。動機(他発的、内発的)。天候描写。日記に書かれないことの背景には、それが日記にふさわしくないとの判断もはたらいていよう。