カッパ・ブックスで出た原作(1958年刊)は、兄が帰省の際、買ってきてくれたものだった。カバーが北川民次の石版画による母子像。印象的だ。
奥付ページを見ると、昭和37年7月23日ともらった日が書き込まれている。10歳の夏休みだ。著者の安本末子さんと同い年だったからだろうか、僕にくれたのは。
奥付ページを見ると、昭和37年7月23日ともらった日が書き込まれている。10歳の夏休みだ。著者の安本末子さんと同い年だったからだろうか、僕にくれたのは。
彼女の家族は在日韓国人。炭坑の閉山が社会背景としてある。読んだ当時はまったく意識していなかった。単なる貧しさでしかとらえていなかった。10歳の限界だろうか。
映画は極貧の世界をずっと描く。転機となるような場面には必ず走る人が登場する。何かあると泳ぐ。走って泳ぐ。これは何の象徴なのだろう。きょうだい4人が一緒に住める日を夢見て、にあんちゃんが妹に語りかける画面で終わる。
一途な保健婦を演じたふっくらした吉行和子、にあんちゃんと末子を演じた二人の子役の迫力がすごい。
その後、現実の二人は、にあんちゃんが慶応、末子が早稲田に進学している。
安本家のその後。
この記事によれば、舞台となった杵島炭鉱大鶴炭鉱所は、玄界灘からの風を受けて回る大きな風車は町を象徴する風景になっているという。
原作を50年ぶりに読む。