構内を歩いていると、向こうからおじいさんがニコッとしながらやって来た。ワイシャツ姿に水色と紺のレジメンタルタイ、綿パン。頭にハンティング帽。つまり、お洒落なのだが、誰なのかわからない。会ったような気もするのだが、確信がない。
「これから交替でーす」。
警備員の人だった。制服姿を思い浮かべて、ようやく腑に落ちた。
制服で人の印象はがらっと変わる。
スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。 ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。 シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...