2013/04/06

『ちくま』4月号

膵がんを告知されたなだいなだが、ケストナーの言葉を引用している。
人生は一度しか生きられない。しかし、一度は生きねばならない。……そして、時が来たら勇気をもって横にどけ。
もちろん文脈は違うのだが、老親の死は「横にどけ」に近づきつつあることを示している。

斎藤美奈子は「スポーツ界に暴力がはびこる理由」。
日本人の42%を占める体罰肯定(推進)論者は、桑田(『新・野球を学問する』)に対抗しうる論理を構築できるだろうか。バカヤロー理屈ではない、というのなら、それこそ軍隊式である。
荒蝦夷(あらえみし)の土方正志さんたちが「2年目のいま読むべき」震災関連本リスト50選を作った。

穂村弘「絶叫委員会」の66回目は「名前の教え方」。
読者に本へのサインを求められ、
穂村 お名前は?
読者 みかです。
穂村 みかさん、えっと、どんな字ですか?
読者 びじゅつのびにちゅうかのかです。
穂村 ……
彼は、なぜ「……」になったのか。中華の「華」と、美術の「美」にもやもやした気持ちになったのか。
穂村 その教え方、わかりますよ。「美しいに華やか」とか、自分では云いにくいですもんね。
ボクは、三本川の川に、浦和の浦、健康の康に、冬至夏至の至。時に、家康の康に、どこそこへ至るの至。とも。

森達也のエッセイに出てくる、田沼さん(誰だろう?)の発言。
近代科学はWHYではなくHOWを探ることで発達してきた。……でもその結果として、人はどこから来てどこへ行くのかとの大命題が、手つかずのまま残されてしまっている。たとえば視覚については、「どのように見えるか」との問いかけはサイエンスになります。けれども「なぜ見えるのか」という問いかけについては、本質的に答えることができない。……死に関してはそうはいかない。WHYを解明しなくては前に進めない。
中下大樹「いのちと向き合う」3:死後一ヶ月の遺体が意味するもの
承認欲求や自尊感情が社会で満たされないと、ある人は他者に攻撃的になり、またある人は自分を守るために殻に閉じこもる。
少子高齢化が進む日本では、誰しもが孤立死予備軍である。そのことに、どれだけの人が気付いているのだろうか。
もちろん、岸本佐知子さんの「ネにもつタイプ」もいい。

今夜は広島泊。
(「ちくま」505号より)

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...