第1回が「千枝子という名前」。
末森さんはかつて、すえもりブックスを主宰、舟越桂のお姉さんでもある。
千枝子さんの名付け親は高村光太郎。
父親の舟越保武さんが面識のない高村氏を訪ね、命名を依頼。
突然の依頼にもかかわらず、彼は聞き入れ、
「女の名前は智恵子しか思い浮かばないけれど、智恵子のような悲しい人生になってはいけないので字だけは替えましょうね」
と言って千枝子と名付けて下さったのだと、小さいときから繰り返し、聞かされてきた。でも、私は最近までそう名付けられたことについて深く考えることを避けてきた。じぶんがそのような大切な名前に値しないという恐れがまずあった。それに……
……
私は、いまやっと「あなたにとってあんなに大切だった智恵子さんの名前をとって、千枝子と名付けてくださったことを本当に有り難く、とても大切に思います」と心から言える。七十年もかかってしまった。70年。
午後からI先生を偲ぶ会。すっかり忘れていて、呼び出されてようやく思い出した為体。メモしておこう。