名前がなんだ:人気の名前はフロンティアではあまり見られない
What’s in a Name? Popular Names Are Less Common on Frontiers
Michael E.W. Varnum and Shinobu Kitayama
2011
Psychological Science vol. 22 no. 2 176-183
要旨
フロンティアでの自主的入植は、自立という価値を促すと言える。しかしながら、現在のところ、研究者は、この過程の行動的帰結についてほとんど知らない。本研究で、われわれは赤ちゃんの名付けで、その地域差を検証した。赤ちゃんの名付けは、一定の個人的かつ家族的意義を持つ行為であるため、主流となっている文化価値を反映している。フロンティアへの入植と自立との想定されるつながりの裏付けとして、われわれが見いだしたのは、米国東部地域にくらべ西部地域の方が人気の名前を持つ赤ちゃんが少ないことである(研究1)。同様のパターンはカナダでも確認され(研究2)、東部の州より西部の州の方が人気名の子が少ない。しかも、世界規模で見ても、人気名はヨーロッパ諸国よりもヨーロッパ人の入植先(つまり、オーストラリアや米国)の方で少ない(研究3)。以上の知見は、世代を超えた文化価値の継承と関係している。
Abstract
Voluntary settlement on a frontier may promote values of independence. At present, however, researchers know little about the behavioral consequences of this process. In this study, we examined regional variations in baby naming. Because baby naming is an act of considerable personal and familial significance, it reflects prevalent cultural values. In support of the hypothesized link between frontier settlement and independence, we found that babies receive popular names less frequently in western regions of the United States than in its eastern regions (Study 1). The same pattern holds in Canada (Study 2), with popular names being less frequent in western provinces than in eastern provinces. Moreover, popular names are less frequently given to babies in world regions in which Europeans have settled (e.g., Australia, the United States) than in European countries (Study 3). These findings have implications for cross-generational transmission of cultural values.
キーワード
frontier settlement independence individualism regional variation names
☆京大の荻原祐二さんが、集団主義社会の日本でも個人主義化が進んでいることを、子どもの名前の変遷から検討しているとか。公表が待ち遠しい。
★自立(individualism)は命名の多様性をもたらす。日本の命名事情の説明にも使えるかもしれない。ただし厳密にはindividualismと個人主義とは別物だろう。individualと日本語の「個人」のニュアンスは異なるから(もっとも、原語と訳語の含意のずれはこれに限った話ではない)。
フルネームで呼んでくれてありがとう
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