鷲田さんのエッセイ「言葉の精査で見える本質」を読んでビックリした(東京新聞、10/31付け)。
「土木工学」にあたる英語はcivil engineering。
市民工学なのだ。
対語はmilitary engineeringらしい。
「軍事」の対が「土木」とは。
びっくり仰天。
世界大百科事典によれば、「工学は,古くは軍事技術military engineeringだけを意味した」。
柳父章さんの『翻訳語成立事情』を読むと、翻訳の問題がよくわかる。その語が示す概念が存在しない場合はとりわけ難しい。societyは最初、交際と訳されていた。individualも個人でよかったのか。原語は同じでも、文脈に応じて訳を使い分ける必要がある。日本語を翻訳する場合を考えれば十分だろう。それを怠って(思考停止)、一語一訳にしてしまうと伝わるものも伝わらない。
鷲田さんは赤坂真理の『愛と暴力の戦後とその後』を引きながら、言語をじっくり精査することの重要性を主張する。例えば、その日本語が英語でどう表現されているのか、それを確認するだけでもわかることは多い。
気になって彼も調べている。侵略は東京裁判ではagression(不当に戦争をしかけること)。憲法はconstitution。
言葉はきわめて政治的だ。