48年生まれの著者に、米寿の母。
母のことを思い出しながら、笑いながら、一気に読んだ。
老人ホームでのできごと。
お母さん(みどりさん)の隣室に入居したおばあさん。認知症で、ドアの鍵で困っている。彼女を手助けしたあと、著者は彼女を事務室まで一緒に行くはめになる。
そのおばあさん、「手を引いてくれますか」
ねじめ「いいですよ」
「ああ、よかった。これで帰れるわ。お兄さんの手、温かいですね。これからも一日に一回手を握ってもいいですか」
「いいですよ」
一番好きな場面だ。
すぐに読めなかった「喚く」は、本書の最頻出動詞かもしれない。
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装画を唐仁原教久(Norihisa Tojimbara)さんが担当。布地風の表面がいい。