2015/08/31

連載「下り坂をそろそろと下る 13」

 新国立競技場問題が深刻化する以前、日本のネット上では、韓国の平昌冬季五輪の施設建設の遅れが再三指摘された。長野などとの分散開催が検討されているという情報が飛び交い、日本のマスコミまでもがまことしやかに記事にした。これは、韓国のいくつかの市民団体が、そのような誓願をしたということに端を発した情報で、韓国の友人に聞くと、ほとんどが「はじめて聞いた」と答えるほどの小さなニュースが拡大された例である。しかもこの話題は、日本の新国立競技場問題が浮上すると、ネットではまったく流れなくなった。情けなさに、涙も流れない。
 北京五輪の際にも、その運営の稚拙さを揶揄する情報がいくつも流れた。おそらく、これから日本は、その痛いしっぺ返しにあうだろう。

平田オリザ「インターネットという閉ざされた空間—韓国・ソウル」から

 他国のアラ探しをしてどうなるというのだろう。

 この前のパラグラフは、同じ語を入力しても、検索結果が韓国語と日本語でこんなにも違うという話(『本』9月号)。
「韓国対イタリア」「サッカー」で検索すると、日本語では「買収」「疑惑」を含むページがヒットするのに対し、韓国語では同様の結果にならない。

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...