2015/11/11

買いたいのに……

暗い道。
自動販売機の前で、80すぎぐらいの女性が立ちすくんでいるように見えた。そのまま通りすぎても動かない。気になって引き返すと、130円のお茶を指差して、これを買いたいのだと言う。握りこぶしの中を見せてもらうと、ちょうど、その金額がある。お金が足りないわけではない。
1枚ずつコインを代わりに投入し、ボタンを押してもらった。ギリギリで手が届いた。手が届かなかったわけでもない。
結局、彼女は投入口がわからなかったようだ。確かに、暗い場所では投入口がどこなのかわからない。そのあたりがすべてメタリックで一様な色をしている。