2016/10/02

名前どおり…… 5 「美」

「家族のこと話そう」東京新聞 2016年10月2日

芸術の厳しさ 父に学ぶ

 有紀子という名は三島由紀夫が好きな父が付けました。普通なら小説の中の誰か女性の名前を選ぶと思いますが「せっかく三島という名字やし、ゆきこにしとこか」と。母は反対したらしいですが結局は父の意見が通りました。

 父は本当に三島由紀夫を愛していて、小さいころは三島由紀夫展に連れて行かれたり、文章を書道で写させられたり。小説が何となく私の前に置いてあったりもしました。三島由紀夫を好きになってほしいという父の気持ちが強すぎて、反発する思いもありました。修飾語が多い長文と感じて、父に「簡潔に書けた方がいい作家なんじゃない」と言ったこともありました。

 でも、高校生になって読み直すと、素晴らしく美しい文章と感じ、本当に何が美しいのかを追究した人と考えるようになりました。小説も舞台も、映画も見ました。自分が生き方や哲学なども含めた美を意識するようになったのは、三島由紀夫という人の生き方や、この名前、名付けた父のせいなのかなと思います。

 三島有紀子 1969年大阪市生まれ、映画監督。
(聞き手 寺本康弘)


 お父さん自身も、きっと同姓がきっかけで好きになったのだろう、三島由紀夫を。と思う。

フルネームで呼んでくれてありがとう

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