2016/10/10

横浜で


塩田千春鍵のかかった部屋 の最終日。

 きのうもらったチケットで、横浜へ。

 以下は、塩田さんへのインタビュー記事から。

 「赤い糸と鍵は、人をつなぐシンボルです。毛糸の赤は血液の赤で、鍵は人の形に似て、大きな頭で小さな肩をしていますよね」

 「この作品では、人と人を赤い糸でつなぎたい、と考えました。アジアで赤い糸は、運命を示します。そして西欧でもゲーテの『親和力』の中には、イギリス軍のロープの中に1本の赤い糸が編み込まれていて、切ったときにどこの軍隊のロープかわかるようになっている、という一説もあります」

 「世界中の一般の方から鍵を募集しました」

 上の写真でもうかがえるように、観客が作品と一体と化している。壁のある一面だけが鏡になっていて、そこに作品の中の自分が映る。見る人と見られるものの一体化とは、見る人がいてはじめて作品は完成する。いったんはそう思った。しかし、人は絶えず動き、人も入れ替わる。ということは、「作品」はその人の「中」にしか存在しない(「中」は頭のなかでもあるし、この空間を歩いたという経験でもある)。そう考えると、塩田さんが作った一見作品らしきものは作品の一部でしかない。

 空間系の作品であれば、すべてこうした特徴を持つのかというと、そうとも限らないような気もする。それが塩田さんならではなのだろう。誰にでもできるわけではなさそうだ。

 この部屋の中を歩いていて、もしかしたら、ぶら下がっているたくさんの鍵の中にかつて失くした鍵があるかもしれない、という気持ちさえ湧いて来た。同時に、この中で寝たら、どんな夢を見るのだろうか、とも。


 作品諸元:制作1週間、鍵15,000個、毛糸3,000ロール(=60km)、扉5つ。

 入場券の裏面にこんな文章があった。「本展は写真撮影が可能です。フェイスブックやSNSにご活用いただき本展のPRにご協力ください」。終了後になりましたが、PRしました、ハイ。



 行きに横浜市営バスを使った。その料金箱(メーカーはどこだろう)が複雑怪奇。ICカード以外の人にとってはむずかしい。なんとかしてあげたいという気にさせる。
 カード用はICカードのタッチパネル、磁気カード型1日乗車券の挿入口(「専用入口」の表示)。現金用は2カ所ある。「硬貨と回数券」「千円札用」。前者には「520円の方(かた)は20円を先に入れてください」と書かれている。500円を先に入れると両替してしまうのだろうか。と、あとで気づいた。

フルネームで呼んでくれてありがとう

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