著者は1955年生まれ。彼のほうが4年遅く生まれているが、子ども時代の経験が似ていて、懐かしく読めた。
描写が的確で、当時を思い出した。何機も作ったライトプレーン。竹ヒゴを曲げるのが楽しかったが、そのうち加工済みに変わり、その楽しみがなくなったことも。
さて、たとえばゴム動力で飛ぶ飛行機を作り、飛ばすまでの場面。
横10センチ、縦5、60センチくらいの紙袋に「東京号」とか印刷してあり、その袋の中に設計図と一緒にプロペラ、車輪、胴体、竹ヒゴ、リブ、ニューム管、ゴム、飛行機紙などの部品が入っている。(略)左手にプロペラ、右手に胴体の後方を持ち、やや上方に向けて構える。先に左手をプロペラから離すとゴムの力でプロペラが回り飛びたとうとする。少し遅れて右手に持った胴体をかるく押し出しつつ離すと飛行機は勢いよく舞い上がる。
6/15、NHKの「仕事の流儀」で、筑紫書体の藤田重信さんが出て来て、フォントづくりのすごさを知ったばかりだった。細かい修正が続く日々を見ていて、それでも完成する日が来るのから、すごい。
そして、字游工房の鳥海(とりのうみ)さん。彼のフォントは毎日使っている。ヒラギノだ。新しいMac OS(El Capitan)には游書体、筑紫体が入っているらしい。
本書は、漢字が游明朝体Rで、かなが文麗仮名で組まれている。どちらも字游工房で作られた書体(つまり、自分たちが作った書体で組まれた本である)。漢字とかなでフォントを使い分けるとは知らなかった。そこまでこだわったことがなかったし、そもそもワープロレベルではできない作業だからということもある。
最近気に入っているのが『1493』で使われていたフォント。なんと言う書体だろう。組版を担当した後田(うしろだ)泰輔さんに聞くのがいいのかな。これで本を出せる日が来るだろうか。
■ 好きな書体で原稿を書ける時代が来るとは思いもしなかった。父親が職場から持って来た活字で遊んだ日々が思い出される。鉛だから、身体には悪かったのかもしれない。
中学生の頃、兄がレタリングの通信教育を受けていた。以前、当時のことをたずねたら、こう返って来た。
「文字は文化そのもの。印刷の源、審美感に堪えるデザインはどういうものかに関心があったように覚えています。今でも書道教室にいきたいと思っています。と言っても時間がありませんが」。
兄も印刷会社にながらくいた。
■紀伊國屋書店の担当者から回答が届き、本文フォントが判明。OTF筑紫明朝Pro-R。OTFはオープンタイプフォント。