「東京新聞」文化娯楽面コラム「風向計」
「3秒の歌声」新妻聖子
大学の英語の授業で自己プレゼンテーションをした。
「歌が好き。歌手になりたい」と語ったら、「歌って!」の声。ためらいつつも、高校の時に覚えたアリア「ピエタ・シニョーレ」の一節を口ずさんだ、約3秒。
それを覚えてくれていた人がいた。2年後に、ミュージカル「レ・ミゼラブル」のオーディション担当者に推薦を頼まれた、その人が「大学の授業で歌を口ずさんだ子の声がとてもきれいだった。変わった名前で新妻聖子という子」と推薦してくれたのである。
役者や歌手としての実績がないのにオーディションに呼ばれたことが不思議だったが、あれがきっかけとは。
別の大学に行っていたら、「名字が新妻でなければ、たらればを言えばきりがないが、こうして私はミュージカルと出会った」。