2018/02/15

ニーズ、そしてニーズ調査という発想

 F市議会の閉会中審査なるものを傍聴した。議題は「公立夜間中学校の設置について」(役所は「について」が好きだ)。「F市に公立夜間中学校をつくる会」の請願を市議会で取り上げるか否かの審議である。

 メンバー全員が賛同しないと市議会で議題とならない(こんなルールがあるとはビックリ)。結論から言うと、自民党と維新が反対し、継続審議(店晒し)となった。

 審議の段階で頻出した言葉は「ニーズ」(脳内テキストマニング)。ニーズがあるのかないのか。この発想自体、問題があるが、ここでは、そのニーズの調査に絞って書く。

 文科省の要請を受けて、F市教育委員会でも「ニーズ」調査をしたと言う。実施要領は文科省から指示があり、それに従って行われたらしい。図書館のような人が出入りする場所に置き、回収。具体的文面はわからないが、きっとふつうの漢字交じりの日本語だろう。夜間中学校を必要とする人の中には調査票の文面が読めない人も多いはずだ。回答者の属性は高卒と大卒が大半だったと言う(標本調査ではない)。さもありなん。彼らに夜間中学校のニーズを聞いて意味があるのだろうか。しかし、この結果が全国から吸い上げられて、一人歩きして、文科省の施策に反映される。やりきれない。

 教育委員会の答弁は「夜間中学の対象となる方がどこにどの程度おられ、公立の夜間中学で学ぶことを希望されているのか、また、その実態を踏まえた対応として公立夜間中学の設置が最適であるのかなどの課題があることから、公立の夜間中学の設置を判断できる状況にはない。引き続き、国や県、他の政令都市の動向などを注視しながら、情報収集を行なっていく」。

 F市は作りたくないのだろう。

 議会は、言葉遣い、空間構成と異世界だった。



公立夜間中学「福岡市に」設置請願 議会委、継続審査に:市教育長は前向き姿勢(一部)
毎日新聞2018年2月15日 地方版

公立夜間中学の設置を求めた請願が14日、福岡市議会第二委員会で審査され、「ニーズの調査をもっとすべきだ」などの意見が出て継続審査となった。だが、星子明夫教育長は「教育機会確保法と請願の趣旨を真摯に受け止め、対応したい」と前向きな姿勢を示し、請願を出した福岡市に公立夜間中学校をつくる会は「一歩前進」と評価している。【松田幸三】