定訳のない術語が出てきたとき、それをどう訳すか迷う場合がある。あるいは一応、定訳があっても日本語としてしっくりしない場合は新訳を提案してみてもよい。
前者の例に、lost letter techniqueがある。そのままカタカナにしたロストレター・テクニックもあれば、各語に日本語をあてはめた放置手紙調査法という訳もある。カタカナ化はともかく、放置手紙調査法はわかりにくいような気がする。放置手紙ってなんだろう。せめて手紙放置調査法のほうがイメージしやすいと思うのだが、どうだろう。
後者の例としては、LCMの4水準がある。LCMとはLinguistic category modelの略語である。水準の一つにdescriptive action verbs (e.g. hit,help, gossip)がある。これは従来、記述的行為動詞と訳されているが、語順を入れ替えて行為記述動詞としたほうが伝わりやすいように思う。またfundamental attribution errorは一般に基本的帰属錯誤とか、基本的な帰属エラーと訳されるが、山岸俊男さんは著書で「帰属の基本的エラー」としている。こちらのほうが意味が伝わりやすい。
初めて訳語を考えた人は、ああでもない、こうでもないと何通りか候補を挙げ、その中には前述したようなアイデアもあったことだろう。それらを並べて最適な訳を選んだという声も聞こえてきそうだ。翻訳はむずかしい。
■
すべて原語で通すという手もある。