2019/07/22

卒論の書き方23:内容の難易度カーブ

論文は読んでもらうためのものである。読者は主査、指導教員である。そのほかに、副査がいる。主査は最初から付き合っているので、卒論の内容に習熟している。しかし副査はそうではない。初めて読む。それを考慮しよう。

卒論内容の難易度を専門用語(概念)の出現頻度とすれば、「はじめに」や「問題」では門外漢が読んでも理解できるように、専門用語は抑えるか、解説を加えながら書く。教員であれば、そうしなくても読むし、理解もする。しかし主査や副査の読む気力と好奇心、それはおそらく萎える。

「方法」「結果」と進むにつれ、難易度は徐々に上がる(研究は学問なのだから)。「考察」の中でピークとなり、その後半で少し下がり、「まとめ」ではもっと下がるようにする。読んだ感も高まるから。



 木下是雄『理科系の作文技術』は、理科系とうたいながら、冒頭はチャーチルのメモで始まる。
1940年、壊滅の危機に瀕した英国の宰相の座についたウィンストン・チャーチルは、政府各部局の長に次のようなメモを送った。
と書かれれば、どんなメモだろうと気になる。先を読みたくなる。

フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...